「有頂天家族 (幻冬舎文庫)」読了。
「宵山万華鏡」が森見版「千と千尋の神隠し」ならこれは森見版「平成狸合戦ぽんぽこ」か。いや違うか。作品中に登場する赤玉ポートワイン(現在は赤玉スイートワインと改称)がやけに美味そう。
「華竜の宮(下) (ハヤカワ文庫JA)」読了。
国土が海に飲み込まれる「日本沈没」か、官僚を主人公とするSFということで「復活の地」の線か、はたまた遺伝子を改変して水に適応する人類を描く「両棲人間」「モロー博士の島」「アマゾンの半魚人」か、と思わせておいてまさかのP.K.ディック展開(本当にそいつは人間なのか)へ。盛り沢山で楽しめる。日本SF大賞、SFが読みたい!ベストSFなどでの高評価もむべなるかな。
「華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)」読了。
小松左京が「日本沈没」で本当に描きたかったのは、国土を失った日本民族の流浪と苦難だった、という話を読んだことがある。いかに“理論的に”日本を沈めるかを書いているうちにあれができてしまったのだとか。私が読んだ話には続きがあって、これが星新一や筒井康隆だったら“ある日、日本は沈没した。さてそこで――”と始めてしまっただろう、と。実際、筒井康隆の「日本以外全部沈没」など、まさにそのノリである。
さて、この作品。同作者の出世作「魚舟・獣舟」と世界観・設定を共有しているのだが、そこにもっていくまでの40ページほどのテンポが凄まじい。“ある日、世界は沈没した”とまではいわないまでも、あれよあれよといううちに世界が沈んでしまう。そこに無理を感じさせないのは「この先をこそ語りたいのだ」という作者の強い思いによるものではないかと思う。