「エトルリヤの壷―他5篇 (岩波文庫)」読了。
某TV番組で筒井康隆が薦めていた「マテオ・ファルコネ」を含む短編集。この「マテオ・ファルコネ」、私の兄が高校のころ、文化祭のクラス演劇で取り上げていた記憶がある。こんな短い作品でも、筋や台詞を細かく覚えていたことに驚かされた。それだけ強い印象を与える作品、ということなのだろう。
「メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)」読了。
伊藤計劃による、人気ゲームの小説化。私自身はこのゲームをプレーしたことはない(主人公が段ボールを被って動き回るゲーム、という印象)のだが、本作と、同作者の作品「虐殺器官」の共通性に驚かされた。
あとがきを読むに、どうやらもともと作者がゲームの大ファンだったらしい。大いに矛盾を含んでいたであろうシリーズ各作品のストーリーを強引にまとめあげるエネルギーの源は、原作に対する愛情だったのだろう。
その強引さからくる言い訳がましさが漂ってしまったきらいはあるが、一流の作家によるノヴェライズとして「2001年宇宙の旅」と並べても誉め過ぎにはならないと信じている。
「これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」読了。
今年のマイ・ベスト候補。正義とは何か、というテーマを、様々な道徳的問題(*)を通じて論じていく。著者はハーバード大の教授(**)。
門外漢なりにつらつらと考えていると、<正義>や<道徳>はある集団が淘汰されずに残っていくために身につける戦略のように思えてくる。たとえば、「我々が殺人や自殺、食人などを悪とみなすのは、そうした行為を是認するような社会はとうの昔に滅びているから」という考え方である。功利主義に近い考え方だが、個人ではなく集団を主体とするのがミソ。各個人の正義の基準は「この考え方を自分の属する集団(家族・会社・地域・国・種)全体に広げたとしたら集団はよりよく生き延びられるだろうか」になる。この考え方にたてば、本書に登場する問題についてもある程度の解は出せそう。ただ、各人が自分をどの集団の成員とみなすかによって判断は当然に異なってくるし、人種差別や戦争なども状況によっては<正義>として是認されてしまうという困った点もある。
さらに考えを進めていくと、ドーキンスが主張した利己的遺伝子のように<正義>がそれ自身の存続を求めて人間集団を駆り立てるような姿も見えてくる。
まてよ、<正義>を<イデオロギー>に置き換えたら当たり前の話か?まあ、門外漢の考えることなんてそんなもの。それでも、読んだ後こんなに考えたくなる本は稀有。皆さんもぜひ。
(*)様々な道徳的問題:
「1人殺すか5人殺すかを選ぶしかない状況に置かれた際、1人殺すのを選ぶことは正しいか」「マイケルジョーダンに高率の税を課すのは正当か」「大学が人種差別是正のためにマイノリティを優先して入学させることは公平か」など。
(**)著者はハーバードの教授:
この本と同じく「正義」を扱う著者の講義はあまりの人気のため、TVで一般公開されたという。録画はNHK教育で放送中+YouTubeでも視聴可能。
DIY生命主催のmixiアプリアワードに自作のmixiアプリ「今日の辻占」をエントリー。mixiのIDをお持ちの方は、ぜひアプリ登録してお試しください(現時点で357名の方にご利用いただいています)。また、よろしければアワードの投票画面から「いいね」をクリックして投票をお願いします。