「若き数学者のアメリカ (新潮文庫)」読了。
第26回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
ものすごく気負った美文調と、妙に無分別な行動の記録とが入り混じって、不思議な雰囲気。
「さぶ (新潮文庫)」読了。
タイトルロール≠主人公という趣向は珍しいのではないだろうか。そしてこの出番(記述)の少なさにもかかわらずさぶの存在感があることにも驚かされる。
良い話で楽しく読んだが、最後はちょっと落語の「芝浜」みたいだったなあ。
「科学と科学者のはなし―寺田寅彦エッセイ集」読了。
「吾輩は猫である」の登場人物、水島寒月のモデルとも言われる筆者によるエッセイ集。
息子の春休みの課題図書として指定されたのを横からちょいと拝借。
身の回りのありふれた現象に対して科学的な考察を加えていく、その見識の確かさに感心する。それは科学的な知識はもちろんのこと、目の前にある物事に疑問を持つ姿勢にこそ支えられているように思う。
同じ日本を、東京を舞台としてはいても、その検討対象となる事物はしかし、寺田寅彦の時代と我々の生きている現代では微妙に異なる。春先、庭の土の上に現れる湯気や「夕風の涼しさは東京名物の一つ」という記述には、移ろわない物理法則という軸で貫かれているからこその違和感を感じてしまう。
中ほどに収められている「津浪と人間」という文章は、執筆当時である1933年に起きた東北の津波を題材としている。今こそ再読すべき内容。いや、本当は一昨年読んでおくべきだった。
「ミラー衛星衝突 下 (創元SF文庫)」読了。
本作における主人公マイルズの任務、大半は事故の原因調査と横領の証拠固めである。もちろん血わき肉おどる展開にも事欠かないのだが、地味といえば恐ろしく地味。それでも読ませてしまう作者ビジョルドの腕がすごい、ということかと。
ちなみに本作、原題は舞台となる星系から「コマール(KOMARR)」。それがなぜまた「ミラー衛星衝突」などという無粋な邦題になったかは不明。まあわかりやすいといえばわかりやすいが。
「遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)」読了。
日本人数学者である作者、藤原正彦が、ケンブリッジでの生活・同僚や隣人についてつづったエッセイ。
数学者というと奇人変人という偏ったイメージを持ってしまいがちだが、そうした素人の期待にたがわず、変わりものの同僚の話題には事欠かない様子。また、子供のいじめや学内の政治などについても明晰な文章で表現されている。
「ミラー衛星衝突 上 (創元SF文庫)」読了。
前作「メモリー」から、実に5年ぶりのヴォルコシガンもの。ビジョルドの作品の中でもこのシリーズはやはり別格。
どのくらい別格かというと、このシリーズに属する作品でビジョルドは、ヒューゴー賞を4回、ネビュラ賞を2回、ローカス賞を2回、受賞しているのである。そりゃあ5年くらいは待ちますとも。