「名もなき毒 (文春文庫)」読了。
この作者の創造する悪人は、怖い。ごく普通の人間に見えるのに内面に恐るべき闇を秘めているタイプの悪人は「こんな奴ぁいないよ」と笑い飛ばさせてくれない。もしかしたら隣に座っているこの人が、下手をすると自分がそうかもしれない、という感じは、他の作者にはちょっと出せない怖さだと思う。
まだ1月だというのに、この本は今年の(わたしにとっての)ベスト1候補だ。脱帽。
「歪笑小説 (集英社文庫)」読了。
食わず嫌いでこれまで読んでいなかったのだが、このミもフタもない楽屋落ち系の面白さは同じ作者の「名探偵の掟」に通じるものがある。
「リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)」読了。
「華竜の宮」で日本SF大賞などを受賞した上田早夕里の作品集。「華竜の宮」と設定を共有する表題作、尻切れトンボのようでいてしっかりと満ち足りる不思議な読後感。
「そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)」読了。
この作者の他の作品を一つも読まずにこれを読んでしまうのはとても間違っているのだと思うのだが、つい。
「ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと」読了。
内容ももちろん示唆に富んでいるのだが、事例の近さ・新しさが印象に残った。「グランズウェル」も「エンパワード」も訳書で読んだが、どうしても海外の・ちょっと前の事例や話題が中心になる。ITやマーケティングについては書物が出て注目され日本語訳が出てからのんびり読んでいたのでは対応がいつも後手にまわってしまうのではないかと感じる。
え、だったら原書読めって?たしかにそうなんですけどねえ。原書を読み終わる前に訳が出るというリスクが本当にあったりするから困るんですよねえ。
「死者の短剣 旅路 下 (創元推理文庫)」読了。
シリーズものに限らず、こうした物語では、主人公の成長(変化)は要素として欠かせないようだ。しかし、あまりに「レベルがあがって」しまうことで話の進行が単調になってしまう傾向が、この作者この作品でさえ見え隠れする。次巻以降も注目したい。
「死者の短剣 旅路 上 (創元推理文庫)」読了。
このシリーズも3巻目。前2巻の感想をこの機会に読み返してみたのだが、いずれも「面白かったが、ヴォルコシガンものか五神教シリーズを…」という感想。自分の感想ながら、笑った。シリーズ第1作を読んでからまもなく丸3年。
「天冥の標V: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)」読了。
新年最初にこういうのを読めると、今年もいいことがあるのではないかと思えてくる。ありがたいありがたい。ある「生物」の発生・発達に関する記述がちょっと「造物主の掟」あたりを髣髴とさせる。