作者も、この話を書きたいがために「エンダーのゲーム」を書いたわけでもないだろうが、そうなのではと思わせるのに十分なでき。
「シャドウ・オブ・ヘゲモン〈上〉」読了。
脇役だけ集めて映画を撮ってるようなものなのに、寄せ集めという感じはしない。「エンダーのゲーム」を書いたのも実はこの作品のための伏線だったのではと思えるほどである。
「夜陰譚」読了。
主人公達に感情移入できない。一つ二つならともかく、短篇集の全作品が、となると計算ずくとしか思えない。
どのヒロイン(そう、収録されている短篇はすべて女性が主人公だ)も形はさまざまながらみな“壊れて”いて、作者も壊れた女性達に何か救いを用意するでもなく、ただ壊れるままに突き放す。男の私は同情することも許されず、冷や汗を流しながら読み進むことしかできなかった。
「失踪HOLIDAY」読了。この作者の短篇は久しぶりに読んだが、このくらいの長さのもののほうが安心して読める気がする。
「疾走!千マイル急行 (上)」読了。
鉄道が主要な小道具、いや、大道具として登場する。鉄道ならではの制約については「ふーんそうなんだ」と感心するしかない。巻頭の地図は重宝。
「星界の断章 <1>」読了。
星界シリーズ作者による、セルフパロディー作品集、と判断して良いだろう。シリーズの熱狂的なファンであればあるほど賛否両論であろうと想像する。私の判定は「ぎりぎりセーフ」。
「タフの方舟 2天の果実」読了。
“宇宙駈ける慇懃無礼”第2弾。
最終話のある台詞でやけに考えさせられた。単なる娯楽作品と思っていると(いや、その認識でほぼ間違いないのだが)突如として妙に重いテーマを突き付けられる。
「タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF」読了。“古代の超テクノロジーをひょんなことから手に入れた主人公が宇宙をまたにかける大活躍”という、言ってしまえば手垢のついた主題でここまで読ませるのは、やはりその特異な人物(人物以外の生物も!)造形によるところが大きい。エンターテインメントに撤したSFとしてバランスがとれている。巷の評判も良いようなので付け加える必要もあまり感じないが、おすすめ。
「老ヴォールの惑星」読了。
この作者には珍しい短篇集。短くはあるが、4篇とも短篇にしておくのは惜しいほどのアイディアが盛り込まれていて、しかも小川一水らしい、「極限の現場に置かれた人間(とも限らない)の姿」がしっかりと描かれている。お買い得と言って良いと思う。
「暗いところで待ち合わせ」読了。
加納朋子あたりが書きそうな筋立て。乙一らしさは「死にぞこないの青」に集中している模様。