「科学と科学者のはなし―寺田寅彦エッセイ集」読了。
「吾輩は猫である」の登場人物、水島寒月のモデルとも言われる筆者によるエッセイ集。
息子の春休みの課題図書として指定されたのを横からちょいと拝借。
身の回りのありふれた現象に対して科学的な考察を加えていく、その見識の確かさに感心する。それは科学的な知識はもちろんのこと、目の前にある物事に疑問を持つ姿勢にこそ支えられているように思う。
同じ日本を、東京を舞台としてはいても、その検討対象となる事物はしかし、寺田寅彦の時代と我々の生きている現代では微妙に異なる。春先、庭の土の上に現れる湯気や「夕風の涼しさは東京名物の一つ」という記述には、移ろわない物理法則という軸で貫かれているからこその違和感を感じてしまう。
中ほどに収められている「津浪と人間」という文章は、執筆当時である1933年に起きた東北の津波を題材としている。今こそ再読すべき内容。いや、本当は一昨年読んでおくべきだった。
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