「これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」読了

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「これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」読了。
今年のマイ・ベスト候補。正義とは何か、というテーマを、様々な道徳的問題(*)を通じて論じていく。著者はハーバード大の教授(**)。
門外漢なりにつらつらと考えていると、<正義>や<道徳>はある集団が淘汰されずに残っていくために身につける戦略のように思えてくる。たとえば、「我々が殺人や自殺、食人などを悪とみなすのは、そうした行為を是認するような社会はとうの昔に滅びているから」という考え方である。功利主義に近い考え方だが、個人ではなく集団を主体とするのがミソ。各個人の正義の基準は「この考え方を自分の属する集団(家族・会社・地域・国・種)全体に広げたとしたら集団はよりよく生き延びられるだろうか」になる。この考え方にたてば、本書に登場する問題についてもある程度の解は出せそう。ただ、各人が自分をどの集団の成員とみなすかによって判断は当然に異なってくるし、人種差別や戦争なども状況によっては<正義>として是認されてしまうという困った点もある。
さらに考えを進めていくと、ドーキンスが主張した利己的遺伝子のように<正義>がそれ自身の存続を求めて人間集団を駆り立てるような姿も見えてくる。
まてよ、<正義>を<イデオロギー>に置き換えたら当たり前の話か?まあ、門外漢の考えることなんてそんなもの。それでも、読んだ後こんなに考えたくなる本は稀有。皆さんもぜひ。