「星新一 一〇〇一話をつくった人」読了。
ケーキを食べる子どもは、ケーキ屋のおじさんの人格を無視する。
ケーキ屋のおじさんがどんな人で、ケーキ屋になるまでにどんな経験をしてきたかなんてことには興味もない。
いま食べている口当たりのいいケーキを作るために、ケーキ屋のおじさんがどんな苦労・努力をしているか。大人ならばそれを理屈でわかっている人もいるかもしれないが、彼らもケーキのクリームからおじさんの汗や涙の味を感じることはないだろう(せっかくのケーキがまずくなるし)。
私は子どもの頃から星新一の作品に触れ、その読みやすさ、一つ一つの質の高さ、そしてその量に感心しながら片っ端から読み漁った。彼が亡くなったときは、すでに発表されているショートショートをほぼすべて読み終えていたが、「もう新しいものは読めないのか」と、とてもさびしかったことをおぼえている。そして、小づかいで最初に買った本が星新一の「宇宙のあいさつ」だったことはこれからも私の誇りである。
本作品は、先日発表された第39回星雲賞ノンフィクション部門をはじめ、第28回日本SF大賞、第34回大佛次郎賞、第29回講談社ノンフィクション賞、第61回日本推理作家協会賞と、さまざまな賞を受賞している。星新一への最高の手向けとなるのではないだろうか。
コメント