「名もなき毒 (文春文庫)」読了。
この作者の創造する悪人は、怖い。ごく普通の人間に見えるのに内面に恐るべき闇を秘めているタイプの悪人は「こんな奴ぁいないよ」と笑い飛ばさせてくれない。もしかしたら隣に座っているこの人が、下手をすると自分がそうかもしれない、という感じは、他の作者にはちょっと出せない怖さだと思う。
まだ1月だというのに、この本は今年の(わたしにとっての)ベスト1候補だ。脱帽。
「歪笑小説 (集英社文庫)」読了。
食わず嫌いでこれまで読んでいなかったのだが、このミもフタもない楽屋落ち系の面白さは同じ作者の「名探偵の掟」に通じるものがある。
「リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)」読了。
「華竜の宮」で日本SF大賞などを受賞した上田早夕里の作品集。「華竜の宮」と設定を共有する表題作、尻切れトンボのようでいてしっかりと満ち足りる不思議な読後感。
「そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)」読了。
この作者の他の作品を一つも読まずにこれを読んでしまうのはとても間違っているのだと思うのだが、つい。
「天冥の標V: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)」読了。
新年最初にこういうのを読めると、今年もいいことがあるのではないかと思えてくる。ありがたいありがたい。ある「生物」の発生・発達に関する記述がちょっと「造物主の掟」あたりを髣髴とさせる。